九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 - City of Darkness

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872574234

作品紹介・あらすじ

"City of Darkness"こと九龍城は、大都市香港の中心に紛れもなく存在した。この高層スラムには、33,000もの人々が住んでいた。九龍城はどのように生まれたのか?これほど多くの人々が、これほど過酷な環境で生活できたのはなぜだったのか?取り壊しを前に、2人のカメラマンが4年間をかけて九龍城の住人たちに取材をし、仕事をする姿や部屋でくつろぐ様子をカメラに収めた。320枚の写真に32人へのインタビュー、さらにその歴史を収めた本書は、もはや存在しないこの特異なコミュニティを浮き彫りにした、比類なきドキュメンタリーである。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で予約して、
    待って待って待ってやっと!でした。

    前回、九龍城の本を読んだ時
    生きた九龍城を読みたいと書きましたが
    これがまさにその一冊!
    九龍城に住んでいた様々な人へのインタビューと
    取り壊し前の九龍城の画像の数々。
    中には元ヘロイン中毒者などもいて驚く(笑)
    九龍城が気になった人は是非読んでください。

  • 九龍城の雰囲気をカラーで感じれました。

  •  アジアンカオスの外側と内側。

     九龍城というものを知ったのがつい最近でして。興味があったので、見かけた瞬間衝動買いしたもの。
     香港にあったスラム、九龍城の外側の写真、内側の写真、そこに生きていたひとたちの姿、彼らの話をまとめたもの。興味深かった、面白かった。欲を言えばもう少し写真が欲しかったけど、そもそも城外のひとが入っても大丈夫になったのも取り壊し前くらいからみたいなので、資料も少ないんだろうなって。
     でも全景を収めた上空写真と、外観の写真はずっと見てても飽きないと思う。すげぇもん、なんか、いろいろ。
     1993年に取り壊しが開始。前年までには住人のすべてが立ち退いていたみたいですが、彼らは今、どんなふうに生きてるんだろうね。

  • 面白い。いまはなき九龍城。ノスタルジーともいえるアジアの風景。
    よく近未来の物語の風景で、こんな高層ビルのスラムがでてきた。CLAMPのクローバーとか、ブレードランナー。
    実際に住んだら、怖そうだけど、面白い場所。
    このどこの国でもない場所の魅力ってなんだろう。
    軍艦島といい、人は極限の場所に憧れるのだろうか?
    図書館で借りたけど、欲しいなぁ。

  • きっかけは、無限城(笑)

    東洋の魔窟、九龍城。
    非日常感にゾクゾクするのが魅力的ですが、そこに住んでいた人々にとってはそれは日常であり、九龍城砦の解体は彼等にとって永遠に続くはずの日常の崩壊であると考えると、好奇心という言葉だけでは語ってはいけないものがあるように思います。

  • かつて魔窟と呼ばれた香港の九龍城の写真集。前々から気になっていたので図書館で発見したときは嬉しかった。
    住民のインタビューも写真もたくさん掲載されていて、大満足の一冊です。
    とにかくすごい。無法地帯っぷりがすごい。あの狭いスペースにごちゃごちゃ物が溢れているのを見てると妙にときめきます。
    廃墟の写真も好きなのですが、これはまた違った魅力。
    外で犯罪を犯しても九龍城に逃げ込んだら警察も立ち入れないとかどんだけ…食品加工業社もたくさん入ってたみたいだけど衛生面とかは大丈夫だったんだろうか。
    まるで映画の世界みたい。90年代初頭まで本当に存在していたんですね。
    取り壊されてしまったのは残念。実物を見てみたかったなぁ。(実際見たら怖くて入れないだろうけど…)

  • 廃墟に関する本を探していた際にAmazonのお勧めに出てきた本。

    世界でも最大規模のスラム街として名の知れた香港の九龍城。1994年に残念ながら取壊しとなったが27000㎡の敷地に約350棟の建物がぎゅうぎゅうに立ち並び最盛期は約33,000人が住んでいたらしい。

    実は建物の構造等ハード面に興味を持ち購入したのだが、どちらかといえば城での生活事情や住人の半生が中心だった。しかしながらこれはこれでとても面白かった。

    「食べるものだと思われているから鳩にお金をかけるのは馬鹿らしいと思われている。」と鳩ブリーダーのチャンクァンリョン氏がサラッと発言し自国との食文化の違いを感じた。犬肉ヘビ肉はまだしも鳩も食うのか。


    本書を執筆したのは写真家2人。
    九龍城の住人や店子へ取材をしたもので今はもう決して目にすることが叶わない城内部の写真がふんだんに掲載されている。

    いや~、写真を見る限り不衛生でごちゃごちゃしている。カオス。
    福利会(175頁)やチェンクーンイウ氏の歯科医院(190頁)、城外では普通かも知れないがとても衛生的に見える。

    潔癖には絶対住めないけど、建物自体が生物のようなその妖しさに魅かれてしまう。
    ベランダには洗濯物や植木鉢が好き勝手に吊るされている。
    最近の綺麗な建物にはどこか無機質な感じを受けるが九龍城からは人間の営みを濃く感じる。
    159頁のキャプションにもあるが、ベランダは無茶苦茶に取り付けられており柵に統一感が無く、つぎはぎ手作り感が見える。
    (というかまずベランダの高さが揃っていない!)

    無秩序なのは勿論ベランダだけではなく、九龍城内の店舗では従業員の保険加入義務もない、休日手当も出さない、営業許可不要(税金を納めない)、その他諸々の許可(衛生や消防など)も不要。着色料の使用基準も知らずに使っていたようだ。

    唯一の規制が45メートル以下の高さ制限。これは啓徳空港が近かった為らしい。

    しかしそんな無法地帯でもそれなりの秩序があったらしく、泥棒と麻薬所持は多いものの、意外にも大きな犯罪は香港の他地域に比べてむしろ少なかったらしい。
    警察がきちんと定期巡回をおこなっていたのも驚きだ。買収されていた警官も多かったようで効果はなかったらしいが、少しは抑止力になったのでは。
    ここの住人はここにしかない居場所を守るため、近隣同士のつながりが強く、犯罪が起きにくかったのだろうか。
    日本でも治安が悪いとされている地域、実際の犯罪率を見ると他地域よりも低かったりするものだ。


    インタビューを受けていた32人の内、歯科医のウォンユーミンさんが印象に残った。

    他の住人は補償額に納得いかず不満たらたらの中、この人も満足とはいかないようだが、何も変えることはできないと、政府の言うことを受け入れるという。

    「誰にも迷惑をかけないから誰も迷惑をかけないでくれ。」
    「これまでここを出ることがなかったから、外の世界のことなんてわからないんだよ。」

    無欲さと諦観と。
    こんなこと思うのも偏見で失礼ではあるが、中国の方には珍しいタイプだなと少し思った。

  • 「東洋の魔窟」を大解剖した一冊。
    九龍城に魅了された人達には是非手に取ってもらいたい。当時九龍城砦に住んでいた人へのインタビュー、内装や生活の様子が写真付きで詳しく書かれている。
    住人の私生活メインで、今や取り壊されてしまった建物なのでしかたがないが、外観の写真がもっと沢山あれば良いと感じた。

  •  九龍城が好きな人なら持っていて損はないバイブル的な本だと思います。写真が多いのはもちろん、当時お住みになっていた方たちのお話や成り立ちの歴史なども書かれていて勉強になる一冊です。

  • 謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地帯のイメージが根強いが、それは以前の話で、実態は外と比較しても犯罪は少なく、住民の自己決定による独自のルールで成り立った自律性のある一つの社会なのだ。ピーク時は3万人が暮らしていたと言われる九龍城の外観は圧巻の一語であり、建築基準法をガン無視した行き当たりばったりの建物が犇いており、子供がブロック遊びをしたかのように自己増殖していく自由かつ悪夢的な九龍城のビジュアルは素晴らしく、写真だけでもその雰囲気がひしひしと伝わってくる。天井から滴る汚水。ネットにうず高く積まれたゴミ。九龍城内で精製された魚肉団子に無免許の歯医者、学校にストリップ劇場と、まさに自由奔放であり、その世界は凄まじい。水源が貴重であるというのは非常に面白く、ギャングのような集団が管理していたのは中々に興味深かった。九龍城自体の怪しさに反比例して住民の生活は穏やかで、だからこそ取り壊しに対する怒りの言葉は生々しく、その感情の行き所のなさには深く同情すると同時に一抹の哀愁を感じてしまう。個人的に刺さったのは日の光の刺さない九龍城の屋上の写真で、抜けるような空と足元のアンテナの残骸、そして住民の子供の笑顔とのコントラストが素晴らしく、団地住まいだった幼少期のことを思い出してしまった。

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著者プロフィール

出版翻訳者。アート・デザイン系ビジュアルブックや実用書をメインにさまざまなジャンルを手掛けている。

「2020年 『売れる配色』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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